1.はじめに
「使える英語教育」のためには、生徒の興味や関心を呼び起こす教材を考案しなければならない。現任校においては、「良い教材」の開発こそが『使える英語』につながる。
2.大津高校の現状
大津高校は熊本市の郊外に位置する普通高校である。生徒の大半は上級学校に進学する。本校は「日本一文武両道の盛んな学校」を目指しているため、部活動が盛んである。サッカ−部は冬の「全国高校サッカ−選手権大会」に連続出場を果たしている。Jリ−ガ−も多数輩出し、昨年のワ−ルド・カップに出場した巻選手や土肥選手も本校出身である。前述のように、全国大会常連の学校であるから、部員も120名ほどおりトップ・チ−ムに入るための競争は熾烈を極める。早朝5時半には最初に来た選手がボ−ル出しを行う。夕方、全体の練習が終了して、真っ暗な電灯の下で、自主練習に励む生徒も多数いる。サッカ−部のほかには、バスケットボ−ルも男女とも全国大会に出場経験がある。さらに野球部やテニス部等、の他の部も活発に活動をしている。このように、部活動が盛んであるため、生徒は極めて礼儀正しく、挨拶もきちんとできる。授業態度も良好である。しかし、英語に対するモ−ティベ−ションという点では、改善の余地がある。時には、練習の疲れから授業に集中出来ない生徒も出てくる。そのような状況の中で、どうやって生徒の英語を学ぶ意欲を高揚させることができるか?を真剣に考えた末に、ふさわしい教材として私は、
A)英作文「ス−パ−・プロジェクト」
B)英字新聞の活用
C)英語の歌を活用した教材を開発してきた。
私の考える「良い教材」とは生徒の能力や実態にぴったりと合った教材である。進学校で使用されている教材は確かに、素晴らしい内容のものが沢山あるが、それをそのまま、他の高校で使った場合に果たして「良い教材」と言えるかは疑問である。自分が今教えている生徒が学びたい内容と、教師の教えたい内容のバランス感覚を持ち、生徒の現状を的確に把握することが大切である。さらに言えば、その内容が教育的であり、生徒が達成感や成就感を感じる内容でなければならない。そのような視点にたって現任校に最適と考え、私が考案したのが次に述べる3種類の教材である
3.教材について
(A)英作文“Super Project”
私の前任校は進学校であった。センタ−で180点近くを取る生徒であっても、英文を書かせると、恐ろしい程単語を知らない。知っていてもスペルや文法にミスが多い。―――といった事実が判明した。そこで私が考え出したのが、名付けて「英作文ス−パ−・プロジェクト」である。使用するテキストは生徒がこれまでに使用した英作文の教科書である。その教科書に私なりに少し「味付け」をして、生徒に作文を書かせる。最初は『英借文』であっても構わない。左側の模範文を真似て、表現方法を盗むのである。一通り、20回分の基礎的な文章を書き終えると、生徒は、自分の書きたい文章や、自分が受験する大学の二次試験の問題などを、自由に英語に直してくるようになる。中には、新聞の読者欄を英語に直してくる生徒も出てくる。
(B)英字新聞
ジャパンタイムズ社のご厚意で、新聞を無料で購読出来る機会を得た。そこで、週末課題として、受け持ちの生徒に対して、内容に関するレポ−ト課題を継続して与えた。生徒は自分の好きな新聞記事を1つ読み、その記事についてa)要約b)感想や意見などを記入し、月曜に教科担当者まで提出する。この課題は生徒一人一人の興味・関心について知ることが出来るばかりでなく、同じ記事に対して様々な意見や考えを生徒が持っている事を知る生徒理解のための絶好の機会となる。
(C)歌の指導
私自身、歌が大好きである。中学生の頃から、ビ−トルズやカ−ペンタ−ズの音楽を聴いて英語を覚えてきた。生徒の大半も音楽が好きであるし、彼らは音感もよい。英語の歌を学ぶことで、英語のリエゾンや英語の持つ躍動感、文化的背景なども学習することができる。そしてなにより、楽しみながら英語を学べるので、一石二鳥である。
4.おわりに
以上が私の実践の一部である。「英作文」の場合も、「英字新聞」の場合にも、大切なのは、生徒の作品を心から誉めることである。人は誠実な関心を寄せられると勇気が湧いてくる。「歌」を歌わせる場合にも、生徒に自信を持たせることが大切である。常に生徒は教師の励ましによって、計り知れない力を発揮する。今後も熊本県の高校生の「使える英語力」を鍛えるために努力と精進を重ねたい。
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