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第23回金子賞入選者論文のレジメ

「使える英語」教育のための試案

−ライティング指導におけるピア・レスポンス活動の実践から日本文化紹介誌 『Let’s Talk about Oita, Japan』の作成に向けて−

大分県立大分上野丘高等学校 

麻 生 雄 治

1.はじめに

 現行の高等学校学習指導要領(外国語・英語)では「実践的コミュニケーション能力の育成」が目標として掲げられているが、英文読解を中心とした受容能力の育成に多くの力を注ぎ、ライティングのような表現能力の育成はあまり重視されていない現状がある。しかしながら、インターネットなどで自由に情報を発信できる時代にあって、また近年の大学入試でも自由英作文問題が多く出題されるようになった今こそ、もっと英語で自由に表現する力を養うべきではないかと考えている。
 そこで、本稿では、自由英作文指導法の一つとしてのピア・レスポンス活動の実践とその成果を報告する。

2.ピア・レスポンス活動の実践とその成果

 ピア・レスポンス(学習者がお互いの書いた文章を読み、フィードバックを与え合う活動)をライティングの授業に取り入れるにあたって、「プロセス・アプローチ」、「意味交渉」、「コミュニカティブ言語教育」、「発達の最近接領域」の4つの理論的な枠組みを参考にした。これらの理論的背景やピア・レスポンスの効果についての先行研究を示すことで、協同で学習することの意義を確認し、実際にライティングの授業内でどのように授業を進めたかを述べた。
 また、ピア・レスポンス活動を通して、生徒の作文がどのように向上したかという成果に関しては、フィードバックの中の文法的な側面に焦点を絞り、質的、量的に調査・分析し、その結果を報告した。具体的には、文法に関するピア・レスポンス活動では、文構造に関するフィードバックが最も多く、以下、語彙選択、動詞、冠詞、名詞の順であった。また、ピア・レスポンスをもらう場合ともらわない場合の比較では、やはりもらった場合の方が書き直しの際に正しい修正をより多くしていることが分かり、ピア・レスポンス活動の有効性を確認することができた。

3.日本文化紹介誌
 『Let’s Talk about Oita, Japan』の作成

 ピア・レスポンス活動の発展として、ニュージーランド修学旅行のファームスティに備えて、実際に使える、日本文化を紹介するガイドブックを作成することにした。3〜4人のグループで1つの話題を設定し、それについて協同で自由英作文活動を行った。目的が明確である上に、読み手を意識して書くため、生徒たちは意欲的に取り組んだ。実際に修学旅行で利用し、ホストファミリーとの会話を円滑に行うことができたという感想を多く得た。

4.おわりに

 自由英作文指導の一つとして、また「使える英語」教育の一つとして、ピア・レスポンス活動を提案した。ピア・レスポンスは、L1(母国語としての英語)やESL(第2言語としての英語)の環境では汎用性の高い指導法でかなり取り入れられているが、日本の英語教育ではあまり取り入れられていない。もっと活用し、そしてもっと自由に自分の考えや言いたいことを表現する機会を与えるべきである。今回ピア・レスポンス活動から英文ガイドブックの作成にいたる一連の実践を通じて、「英語を使う」ことを重視した英語指導の必要性をあらためて感じた。

「使える英語」教育のための試案

〜生徒の意欲を高める指導教材の研究から〜

熊本県立大津高等学校

鬼 塚 利 博

1.はじめに

 「使える英語教育」のためには、生徒の興味や関心を呼び起こす教材を考案しなければならない。現任校においては、「良い教材」の開発こそが『使える英語』につながる。

2.大津高校の現状

 大津高校は熊本市の郊外に位置する普通高校である。生徒の大半は上級学校に進学する。本校は「日本一文武両道の盛んな学校」を目指しているため、部活動が盛んである。サッカ−部は冬の「全国高校サッカ−選手権大会」に連続出場を果たしている。Jリ−ガ−も多数輩出し、昨年のワ−ルド・カップに出場した巻選手や土肥選手も本校出身である。前述のように、全国大会常連の学校であるから、部員も120名ほどおりトップ・チ−ムに入るための競争は熾烈を極める。早朝5時半には最初に来た選手がボ−ル出しを行う。夕方、全体の練習が終了して、真っ暗な電灯の下で、自主練習に励む生徒も多数いる。サッカ−部のほかには、バスケットボ−ルも男女とも全国大会に出場経験がある。さらに野球部やテニス部等、の他の部も活発に活動をしている。このように、部活動が盛んであるため、生徒は極めて礼儀正しく、挨拶もきちんとできる。授業態度も良好である。しかし、英語に対するモ−ティベ−ションという点では、改善の余地がある。時には、練習の疲れから授業に集中出来ない生徒も出てくる。そのような状況の中で、どうやって生徒の英語を学ぶ意欲を高揚させることができるか?を真剣に考えた末に、ふさわしい教材として私は、
A)英作文「ス−パ−・プロジェクト」
B)英字新聞の活用
C)英語の歌を活用した教材を開発してきた。
 私の考える「良い教材」とは生徒の能力や実態にぴったりと合った教材である。進学校で使用されている教材は確かに、素晴らしい内容のものが沢山あるが、それをそのまま、他の高校で使った場合に果たして「良い教材」と言えるかは疑問である。自分が今教えている生徒が学びたい内容と、教師の教えたい内容のバランス感覚を持ち、生徒の現状を的確に把握することが大切である。さらに言えば、その内容が教育的であり、生徒が達成感や成就感を感じる内容でなければならない。そのような視点にたって現任校に最適と考え、私が考案したのが次に述べる3種類の教材である

3.教材について

(A)英作文“Super Project”

 私の前任校は進学校であった。センタ−で180点近くを取る生徒であっても、英文を書かせると、恐ろしい程単語を知らない。知っていてもスペルや文法にミスが多い。―――といった事実が判明した。そこで私が考え出したのが、名付けて「英作文ス−パ−・プロジェクト」である。使用するテキストは生徒がこれまでに使用した英作文の教科書である。その教科書に私なりに少し「味付け」をして、生徒に作文を書かせる。最初は『英借文』であっても構わない。左側の模範文を真似て、表現方法を盗むのである。一通り、20回分の基礎的な文章を書き終えると、生徒は、自分の書きたい文章や、自分が受験する大学の二次試験の問題などを、自由に英語に直してくるようになる。中には、新聞の読者欄を英語に直してくる生徒も出てくる。

(B)英字新聞

 ジャパンタイムズ社のご厚意で、新聞を無料で購読出来る機会を得た。そこで、週末課題として、受け持ちの生徒に対して、内容に関するレポ−ト課題を継続して与えた。生徒は自分の好きな新聞記事を1つ読み、その記事についてa)要約b)感想や意見などを記入し、月曜に教科担当者まで提出する。この課題は生徒一人一人の興味・関心について知ることが出来るばかりでなく、同じ記事に対して様々な意見や考えを生徒が持っている事を知る生徒理解のための絶好の機会となる。

(C)歌の指導

 私自身、歌が大好きである。中学生の頃から、ビ−トルズやカ−ペンタ−ズの音楽を聴いて英語を覚えてきた。生徒の大半も音楽が好きであるし、彼らは音感もよい。英語の歌を学ぶことで、英語のリエゾンや英語の持つ躍動感、文化的背景なども学習することができる。そしてなにより、楽しみながら英語を学べるので、一石二鳥である。

4.おわりに

 以上が私の実践の一部である。「英作文」の場合も、「英字新聞」の場合にも、大切なのは、生徒の作品を心から誉めることである。人は誠実な関心を寄せられると勇気が湧いてくる。「歌」を歌わせる場合にも、生徒に自信を持たせることが大切である。常に生徒は教師の励ましによって、計り知れない力を発揮する。今後も熊本県の高校生の「使える英語力」を鍛えるために努力と精進を重ねたい。

異文化理解と高校教育

福岡県立福岡高等学校

鹿 野 敬 文

 最近の教育改革の動きを簡潔に整理したものとして、山梨学院大学 生涯学習センター所長 黒沢惟昭の発言がある: 
新しい世紀を目ざす教育改革のためには大別して次の二つのヴィジョンがあると思われる。一つは、世界経済のグローバリゼーションの潮流に沿って、戦後教育の理念と制度をドラスティックに転換しようとする、新自由主義(ネオ・リベラリズム)と呼ばれる文脈の教育改革である。具体的には市場原理至上主義ともいうべき、私的競争と自己責任を強調する改革路線である。それに対して二つは、教育改革を市民社会、地域社会の再生と結びつけて実現しようとする立場である。それは私的競争の強調ではなく、社会的「弱者」も配慮しつつ、多様な人々が共生する社会、そのための公共空間を拡大する方向への教育改革である。

 黒沢が言う後者のヴィジョンの方向性として、「共生」と「公正」を指摘することができる。これらはともに開発教育のキーワードでもある。このことは、立教大学の田中治彦が開発教育を「地球規模の開発問題と南北問題の構造と原因を理解し、基本的人権の尊重、環境の保全、文化的アイデンディティの尊重のうえに立って、より公正な地球社会の実現をめざして開発問題と南北問題の解決に向けて参加する態度を養う教育学習活動である。」と定義していることからもわかる。 

 これまで、「共生」「公正」の意識を高校生の身につけさせようと、様々な学習方法が考案されてきた。「プランニング」という方法もその一つにあたる。この方法は単なる異文化理解にとどまらず、望ましい開発のあり方を考え、ともに生きることのできる公正な地域社会作りを実践するためのものである。

 今回は、この「プランニング」の一手法である「海外支援計画作り」について述べることにした。と言うのも、実戦経験のある高校教師が「海外支援計画作りは、『異文化理解』というテーマを身近なものとして考えさせるのにも、責任ある地球市民意識を育てるのにも役に立つ。」と指摘しており、また参加した高校生の間でも「海外支援計画作りは、世界の問題に主体的に関われるし、共生と公正を目指した世界の変革や創造に参加できるのでとても楽しい。」と言って好評だからである。 

 ここでは、筆者が行った「ラオス支援計画作り」の概要、及びそこから得た知見について述べる。

「使える英語」教育のための試案

読解プロセスの理解と読解ストラテジーの
使用を促す授業の試み

北海道札幌工業高等学校

松 本 広 幸

 「使える英語」教育の中心的課題がコミュニケーション活動にあることは明らかであるが、リーディングは「使える英語」の基礎技能として極めて重要である。一般に、習熟度が低い第2言語の学習者は、テキストの解読に過度に偏り、読解プロセスについて誤った理解をしている。この傾向は、読解力を養成する上で大きな阻害要因となる。「使える」レベルの読解力を養成するために多読が重用されているが、この傾向を克服するとより効果的な多読指導が可能になると思われる。

 先行研究においては、読解プロセスの適切な理解を促すこと、および読解ストラテジーの効果的な使用を促すことの重要性が示されている。読み手の読解プロセスについての内的モデルは、読解力に影響を及ぼす要因である。また、読解プロセスを相互作用的と捉える意識の形成は、読解力を高めるだけではなく、読解ストラテジーの協調的使用を促す。本試案では、これらの先行研究に基づいた授業展開を提案する。本試案は放送大学北海道学習センターの面接授業科目「初級英文読解」で実施され、読解プロセスの理解を促す指導、要旨把握を中心として読解ストラテジーの使用を促す指導、およびこれらの指導に基づく読解演習を行った。

 指導の効果を検証するために、記述式の読解力テスト、読解方略質問紙調査、コース目標の達成度調査を実施した。研究仮説として、(1)本試案の指導は英文読解力を向上させる、(2)本試案の指導は読解ストラテジーの使用を量的、質的に向上させると考えた。データ分析の結果、研究仮説(1)は肯定された。研究仮説(2)に関して、本試案の指導は読解ストラテジー使用を量的に向上させたが、質的な面では結論を導くに至らなかった。

 本試案においては、非常に短期間の指導にも拘らず、読解力の向上および読解ストラテジー使用の量的な向上が見られた。習熟度が低い第2言語学習者の読解指導においては、読解プロセスの適切な理解を促す指導、および読解ストラテジーの効果的な使用を促す指導の組み合わせが有効であろう。言い換えると、読解プロセスについての適切な理解が、読解ストラテジーの効果的な使用のための前提であると考えられる。ただし、多くの受講者が語彙力と文法力の不足を読解の阻害要因と捉えていることは、解読の重要性をあらためて示している。学習者の習熟度が低い場合、語彙力や文法力を高めるように特段の配慮が必要であろう。